新型インフルエンザ、治った。

今日は13日の金曜日である。


月曜の夜に調子が悪くなって通院して二日ほどタミフルした後、熱は下がり、内臓および全身の痛みもほどなくして過ぎ去って、今に至る。


食事も喉を通るようになり、おなかもコポリコポリと音を静かにたてながら消化活動に勤しんでいる様子である。
そろそろ病状が落ち着いてきたので、自分の調子を見定めようと、身体の感覚に注意を払いながら立ち上がりトイレに行きがてら歩いてみると、妙な違和感と下半身の異様な重さの感覚に襲われる。
ずしり、ずしり、といった音を立てているのではないかと思うほどの重量感。
足回り、とくに太股にかけては明らかに痩せたような気がしていたのだけれど、それに逆行するように重みが増していくのを感じる。
その刹那、一キロの綿と一キロの鉄ではどちらが重いか、という質問が頭によぎって、関係ないな、とすぐに結論が出たので意味も無く独りでにやけてしまった。


考えてみるに原因は、おそらく一日目から二日目の間に見舞われた、あの腰をはじめとする全身の筋肉のずきずきとした痛みに伴うものだろう。
全身の発熱とビールスとの攻防戦によって筋肉組織が破壊され、さらにいえば数日間寝たきりの状態だったのだから仕方がないのだろうけれども、それにしたって歩きづらい。
歩きづらさは神経系がやられて機能的に若干の不全状態に陥っているのではないかと思い、ちょっとカタカタと横や上下に動かしてやると、なんとなく軽くなってくるのを感じる。
けれど今日はさむいから、すぐにやめてしまった。
きっとすぐにもとに戻るだろう。


それから、バイト先から「治った証明を持ってきてくれ」と言われていたことを思い出す。んなもんこの世に存在しねーよ・・・と心にずっしりと一キロの綿がのしかかる。調べてみると悪魔の儀式のようなその風習は、わが国では割と一般的に行われている習俗的な様式らしい、ということがわかった。
みんなみんな、治った証明書を、新型インフルエンザの患者が列を成して受診を心待ちにしている病院に取りに行けと、数分でも苦しいから早いトコ終わりにしたい人たちの待つその列に割り込んで「病気になってから7日たちましたよね、元気ですよねボク」という痴呆のような質問をお医者様にしにいけと、そう会社や学校に言われているのだそうだ。
一般的には病院で発行してくれるものは(とっても高価な)診断書である。
治癒証明だとか、そんなへんちくりんなものを出している、ということはない。
もし出しているのであるとするならば、私たち愚民の愚行に半ば仕方なく対処してくれているだけだろうと思う。
ならば、3千円の診断書を持っていこうか、とも思ったけれど、それも馬鹿馬鹿しいように思えて、どれも厭になる。たかいし。
おそらくきっと、それじゃあ満足してくれないだろう。
「なおったよ」って書いたものじゃないと、駄々こねてうるさいんだろうな。
けれどこの時期に、治ったって書いた紙くれよ、と病院の列に割り込むのは社会通念上最低の行いなのではないかと不安になる。
あの医者の野郎にもプゲラプゲラとされるだろう。


治ったことを知っているのは、たぶんぼくの細胞くんだけですよ。
細胞くんに書いてもらえばいいや。
アハハアハハ






おまけ:


そんな馬鹿馬鹿しい、禍々しい現実に嫌気が差したのか、厚生労働省もわざわざガイドラインとなるような文書をこしらえている。


新型インフルエンザ(A_H1N1)に関する事業者・職場のQ&A(平成21年10月30日)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/infu1013-1.pdf
(PDFファイル注意)


以下引用



> Q5 新型インフルエンザ(A/H1N1)に罹患した労働者が復職する際、留意することはありますか。治癒証明書や陰性証明書が必要ですか。
>
>
> 新型インフルエンザ(A/H1N1)でも、通常のインフルエンザと同様、発熱等の症状がなくなってからも感染力が続くと考えられています。
> 基本的に、熱などの症状がなくなってから2日目までが外出自粛の目安です。しかし、完全に感染力がなくなる時期は明確でないことから、業務上可能であれば発症した日の翌日から7日を経過するまで、外出を自粛することが望ましいと考えます。
> なお、労働者に対し治癒証明書や陰性証明書の提出を求めることについては、インフルエンザの陰性を証明することは一般に困難であることや、患者の治療にあたる医療機関に過剰な負担をかける結果になることから、望ましくありません。


だってさ。


厚生労働省:健康:新型インフルエンザ対策関連情報
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/index.html