VAIOの不調の季節がやってきた

 突然妙なことを言うようではあるが、私のVAIOは定期的にぶっ壊れる。

 ぶっ壊れる、といっても実のところそれは、“使い物にならなくなる”といったニュアンスでしかないのだが、半年程度使っていると必ず症状が発揮されるところをみるに、これは看過できるというようなレベルをとうに超えている。

 さて、その症状というのは、ある日突如として現れるのである。まずHDDのセクタエラーがある、というわけでもないのに、システムファイルが次々と破損してゆき、その次には必ずディスプレイドライバが壊れてモニタが正しく表示できなくなる。この現象は不思議と毎回同じもので、ディスプレイの右側に白い縦縞が発生し始める。それと同時に、前回の再セットアップから半年間使った目安となるのだ。なんとも親切なソニー製のタイマー機能である。

 そしてこの不調は徐々に拡大してゆき、ついには起動すらしなくなってしまう。だが初期段階においてはセーフモードで起動することが許されている。

 おそらくこれはソニー社のせめてもの心遣いによるものなのだろう。セーフモードで入ることにより、デスクトップに散らかしっ放しの編集中のデータを別のドライブへと回収することができる。もちろんその後は徐々に起動不可になっていくことはわかっているので、移すべきデータやバックアップするべきデータを勘定することはもう慣れっこさんとなっている。

 そうこうしているうちに、着々と再セットアップをする準備が整う。ひたすらに各種データをコピーしている待ち時間に、リカバリDVDを戸棚から掘り出しておくのだ。

 そして私はいつもの手順に従ってDVDをメインマシンのドライブへとすべりこませる。その後、次々と表示される何の意味のないメッセージたちを華麗にスルーし、無機質にただボタンを押していく。

 だが私は決してこの作業を嫌っているわけではない。むしろ好きなくらいだ。なにせこの作業を行うことによって、またクリーンで快適なWindowsに会えることを知っているからだ。きっとその為に我が家のVAIO君は厳密なスケジュールに則り、ぶっ壊れるに違いない・・・そんなことをぶつぶつと考えている間に、気が付けばいつものとおりにセットアップが完了する。

 こんなVAIO君ではあるが、かれこれ6年もの歳月をともに歩んできたことを考えると、ある種の感慨深い想いも、自然と込み上げてくるというものだ。

 「これからもよろしくね。」と、私は心の中でそっと唱えるようにつぶやく。もちろんこれは、半年後の縦縞の出たモニタの前に座る自分に向かって、そっとエールを送っているものである。